【独立リーグとはなんだ?】その10 2014年12月の再出発

広尾晃

2014年12月の一大発表 

 今から2年前、四国アイランドリーグplusは、大改革を行った。それはこれまでの日本のスポーツ界では考えられないような思い切った試みだった。
また、それに際して、大胆なディスクロージャー(情報公開)も行った。
日本のスポーツ界は経営状態、ビジネスの中身についてここまで公開するのも極めて珍しい。
四国アイランドリーグplusは、設立直後からベンチャー企業などの経営者が運営にあたってきた。独立リーグの運営に際しても、同じビジネスマインドで取り組んだのだ。
今季も四国アイランドリーグplusは、MLBの大打者マニー・ラミレスが参戦するなど話題に事欠かないが、今の展開の原点も、この時の改革にあるといってもよい。
 
当時のレポートを紹介し、四国アイランドリーグplusの今の立ち位置を確認したい。


鍵山誠CEO(当時)の発表

 
2014年12月13日、香川県高松市内のホテルで、四国アイランドリーグPlusの設立10周年の記念式典が行われた。
席上、四国アイランドリーグPlusが来季からアメリカで試合を行うなど、画期的な戦略を展開することが発表された。
四国アイランドリーグPlusは、元西武のスター選手、石毛宏典が「日本でも独立リーグを」と呼びかけて結成された。
2005年からペナントレースを開始。当初は徳島、香川、愛媛、高知の四国4県でスタートしたが、その後福岡、長崎が加入。また三重も加入。しかし、いずれも短期間で撤退、解散。今は元の4球団で運営している。
この時点では、10年間で約750人の選手を受け入れ、このうち45人がNPBに進んでいた。
 
この間、リーグの運営体制は大きく変わった。
4球団は2年目には独立採算の企業に分社化されたが経営難に陥り、今では4球団とも経営体制は入れ替わっている。
またリーグの運営も、石毛宏典が退任し、現CEOの鍵山誠氏が引き継いで現在に至っていた。
式典の冒頭、10年の歩みが紹介された。その上で、鍵山CEOが、四国アイランドリーグPlusの今後の構想を発表した。
 
 それは、日本のこれまでのプロ野球リーグとは一線を画す、画期的なものだった。 

1.全球団による健全経営


 そもそも、球団の経営状態をここまではっきりと開示すること自体が異例だと言えた。
リーグ全体での赤字額は2006年年度には2億円だったが、2013年度には5963万円まで圧縮された。高知、愛媛などは単年度黒字を達成した。
経営努力をさらに進め、4球団全体での黒字化を目指すと明言した。
 
そのための方策として、レギュラーシーズンの集中化を行う。
これまで4月から9月までの180日間に週末を中心に、各球団で80試合を行ってきたが、これを4月5月(前期)と8月9月(後期)の2期に分け、平日を中心に集中的に行うこととした。
これによって経費を圧縮し、支出額を制限する。



 

2.さらなる選手強化と海外展開


改革の目玉だった。
前期、後期の間にできた2か月間を、海外展開の期間とする。
25人程度の選抜チームを結成し渡米、米独立リーグのキャンナムリーグ(カナディアン、アメリカンリーグ)、アトランティックリーグの各球団と対戦する。
 
キャンナムリーグとの試合は、17試合が予定され、すべてリーグの公式戦に組み入れられる。アトランティックリーグとは8試合程度、こちらは調整中。
キャンナムリーグは4球団。20年の歴史を持ち、過去に佐野滋紀なども在籍した。
アトランティックリーグは8球団。独立リーグの中でも実力は最上位にあるとされる。過去にマック鈴木、大家友和、渡辺俊介が在籍。

 
この海外転戦によって選手は実力を磨く。また現地との交流によって人材発掘やMLB関係者へのアピールも行う。
さらにすでに行われているアメリカでのトライアウト事業も洗練化させる。

 

 

3.地元地域との共生、新たな事業創出

 
海外遠征組を送り出した四国4球団は、この期間を利用して地域貢献をさらに進める。収益に結び付くようなイベント、事業などを展開する。
選抜されなかった選手は、この期間に実力向上を目指しトレーニングに励む。そしてより地域密着を進める。
 
さらにJABA(日本野球連盟)、NPBとの連携を強化していく。




 

鍵山誠CEOは、「野球の実力は向上したが、経営陣の努力はそれに及んでいない。独立リーグという“文化”を持続するためにも、赤字の解消は絶対に必要」
とし、海外戦略については
「リスクはあるが、経営について考え抜いた末に決断した」
と語った。

 

 生き残りをかけ、考えに考え抜いて打ち出された「海外戦略」四国アイランドリーグPlus

この発表の後、鍵山誠CEO(当時)は、記者団からのインタビューを受けた。そこで発表の真意も説明された。

四国アイランドリーグPlusの改革は
1.全球団による健全経営
2.さらなる選手強化と海外展開
3.地元地域との共生、新たな事業創出
だった。
 
簡単に言えばペナントレースの開催期間を圧縮し、試合開催コストを削減。その空いた時間に25人程度の四国アイランドリーグPlusの選抜チームを結成して渡米し、北米の独立リーグと対戦するというものだった。

 

1.四国アイランドリーグPlusのペナントレースはどう変わるのか?

これまで四国アイランドリーグPlusは、180日間で前後期80試合を開催してきた。
試合日程は観客動員が見込める週末を中心に組まれていたが、週末は球場の確保が難しい上に、会場使用料も高かった。
また、連戦が少なかったために、チームは四国各地を転戦。移動コスト(主にバス)も高くついていた。今回は、前後期それぞれ60日間(4~5月と8~9月)で“限りなく40試合に近い試合数”を消化する。
週末ではなく、平日を中心に連戦を組む。
鍵山CEOは
「アメリカの独立リーグは90日で90試合を行うような過酷な日程を組んでいる。NPBでもMLBでも、ほぼ毎日試合をするのが普通だ。これまでの日程は緩すぎた。選手にとっても過酷な日程を消化する経験を積ませることが必要だ」
と述べた。
記者団から
「6月、7月に独立リーグの試合が見られないのは、デメリットではないか」
と質問があったが
「この時期は、高校野球の予選と日程が重なって、球場の確保が厳しかった。高校野球の試合とも競合していた。この時期を開けることで、メリハリがつく」
とのことだった。
今回の日程の改変によって各球団の試合運営コストは10~20%削減されると言う。
各球団は毎年「あと一歩で黒字化」という収支状態だっただけに、このコストの圧縮は非常に大きい。
なお、これまで交流戦という形で日程に組み込まれていたソフトバンク3軍との試合は引き続き実施される。

 

2.海外展開は具体的にどのように実施されるのか
 

25人の選抜選手で構成される遠征チームは、6~7月に北米を転戦する。
そのコストは500万円~1000万円と見積もられているが、この費用は全額、リーグが負担する。各球団の負担はない。
チーム名や、ユニフォームなどをどうするかは現在検討中。スポンサーを募集することも考えていると言う。
 
海外を転戦しても、単なる「親善試合」では、あまり意義がない。
今回は、キャンナムリーグと17試合が予定されているが、これらの試合は、交流戦扱いとなり、キャンナムリーグの公式戦に組み込まれる。
つまり、四国との対戦は、ペナントレースの勝敗や各選手の個人成績に反映される。真剣勝負となる。
今年、キャンナムリーグなどを視察した鍵山CEOは
「彼らのプレーは非常にレベルが高い。素晴らしい能力を持った選手がいる。彼らと戦うことで、四国の選手たちも成長すると思う」
と語った。
独立リーグで最もレベルが高いとされるアトランティックリーグとの試合は、現在のところ8試合程度。詳細は現在、詰めているところだとのこと。
 
米独立リーグにはMLB関係者なども視察に訪れる。選抜チームの選手にとっては、アピールのチャンスになる。さらに、米独立リーグから四国に入団する選手も出てこよう。
リクルート面でも大きな意義があると言えよう。
 
この試合の模様は、ネットを通じて日本にも伝えられる。できれば動画配信をしたいとのことだが、これも現在、調整中。

3.海外遠征中に、残ったチーム、選手は何をするのか?


選抜チームが北米を転戦している2か月間、四国の4球団には「収益化へ向けて地域密着の活動をいかに展開できるか」が問われている。
試合がない分、イベント、プロモーションなど地域に密着した活動ができる。この時期に各球団の経営手腕が、問われていると言えよう。
また残った選手は、当然、練習に励むことになるが、この時期に実力を蓄え、首脳陣にアピールすることが求められる。またこれまでに増した地域貢献活動も行わなければならない。
 

4.この大胆な改革の背景に何があるか?


 鍵山誠CEOは、減少しつつあるとはいえ、各球団が赤字を出し続けていることについて
「(実力が向上している)選手に比べて、経営努力が足りなかった」
と自省している。
しかしながら、全国よりも早いペースで少子高齢化が進む四国を基盤にして従来の努力を続けるだけでは、展望は開けない。観客動員は減少傾向にある。
そういう経営的な危機感から、この大胆な戦略を案出したと言う。
「リスクはある。当然、批判もある。しかし、リスクをとってでも四国以外での可能性を求めたい。この戦略は考えに考え抜いて作ったものだ」
と語った。
筆者は今年春にも鍵山CEOや、関係者に話を伺う機会があったが、すでにそのときには今回の戦略の原型が出来上がっていた。
議論を重ねた上での決断だったことは間違いがない。
 
この間、四国アイランドリーグPlusは、JABA(アマチュア野球)やNPBとの関係も強化させている。
できることはすべて行い、生き残りと、さらなる発展を期して、大きな一歩を踏み出そうとしているのだ。



 

この発表から2年、四国アイランドリーグplusは、今、どんな状態なのか。
現状について、今後現地レポートも交え、紹介していきたい。