【独立リーグとはなんだ?】 その9 外国人選手にとっての独立リーグ

広尾晃

外国人枠が広がる中で

 
独立リーグでは、NPBと同様、多くの外国人選手がプレーしている。「外国人枠」はないから、何人でも受け入れ可能だ。
 
NPBの外国人選手と同様、MLB傘下のマイナーリーガーもいるが、アメリカの独立リーグでプレーしていた選手、アメリカ以外の国の様々なリーグでプレーしていた選手もいる。
 
こうした選手が独立リーグにやってくる第一の目的は、「NPBスカウトの目に留まる」ということだ。
 
以前はNPB各球団では、外国人選手は「2人」と相場が決まっていた。支配下登録も2人~3人。シーズン前に契約をすませば、少々成績が悪くてもそのシーズンの外国人は「2人」。当たりはずれはシーズン成績で判断したものだ。
 
しかし外国人枠はどんどん緩和されて今は支配下登録は無制限、ベンチ入りは4人(野手、投手ともに最大3人)になっている。
各球団ともに、支配下に4人以上の外国人選手を抱えるのが普通になった。
中には、昨年の巨人のように、投手でマシソン、ポレダ、マイコラス、ガブリエル、メンドーサ、野手でギャレット、クルーズ、アブレイユ、アンダーソン、ガルシア、育成枠の投手にペレス、ソリマン、アダメスと、13人もの外国人選手を抱えるチームも出てきた。
外国人選手の競争も激しい。4つしかないベンチ入りを巡って、投手、野手は激しく競り合う。球団も、外国人選手が「外れ」だと判断すると、シーズン中でも新たな外国人選手を獲得するようになった。
昔は、外国人選手と言うと高額年俸で獲得するのが普通だったが、今の外国人選手の年俸は、一部の実績ある大物選手を除けば、NPBのレギュラークラスと比較してもそれほど多くはない。特にシーズン中にピックアップされる選手は年俸数百万円と言うケースもある。
 

独立リーグから手軽にNPBに


 香川オリーブガイナーズ時代のアレッサンドロ・マエストリ


そういうときに手っ取り早いのが、日本の独立リーグでプレーしている選手だ。国内でプレーしているから呼びやすい。日本での生活環境にも慣れている。
そして四国アイランドリーグplus、BCリーグともに、長くリーグ戦を続けているので一定のレベルがあることがわかっている。独立リーグでそれなりの成績を上げている選手は、NPBで通用する。という「計算式」が成り立っているのだ。
さらに外国人選手は日本人選手のように「ドラフトにかける」などの手続きがいらない。双方の球団、選手が了承すれば、極端に言えば翌日にでも出場が可能になる。
そういう手軽さもあって、独立リーグで「NPBへの移籍」を夢見る外国人選手が増えているのだ。
 
こうした移籍の好例は2012年に四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズで投げたアレッサンドロ・マエストリだろう。
彼はイタリアの出身。イタリア国内リーグでプレーしたのち、WBCイタリア代表として出場したのがきっかけとなってMLBシカゴ・カブスのマイナーに移籍する。しかしMLBに昇格することなく2011年に戦力外となったのちに、香川オリーブガイナーズにやってきた。
香川オリーブガイナーズでは救援投手として31試合に投げて12セーブ、防御率1.24と好投。これがオリックスのスカウトの目に留まり、7月4日にオリックスが獲得を発表。
この年は8試合に先発し4勝、翌年以降はロングリリーフも可能な中継ぎ投手として重宝され、4シーズンにわたってプレーした。
2015年限りでオリックスを自由契約となり、昨年は韓国のハンファで投げたのちにBCリーグの群馬でプレーしている。
彼は独立リーグからNPBへの復帰を目指しているのだ。



群馬ダイヤモンドペガサス時代のカラバイヨ 
 

独立リーグだからこそ目に留まる

 
マエストリはNPBでプレーした最初のイタリア生まれのイタリア人選手になった。
アメリカ以外でプレーしていた選手はこれまで、NPBのスカウト網に引っかかることはなかった。NPBの外国人スカウトは、MLBと提携している。MLBその傘下のマイナーリーグでプレーする選手がターゲットだ。マエストリは短期間マイナーで投げたが、日本のスカウトの目に留まるような成績は残さなかった。
しかし独立リーグに来たことで、マエストリは今度は日本選手を探すスカウトの目に留まったのだ。前述のとおり、日本の独立リーグの成績には一定の信頼性がある。
「四国アイランドリーグplusでそこそこの成績を上げたのなら、NPBでも通用する」と判断されて契約されたのだ。
独立リーグ側は、シーズン途中に外国人選手がピックアップされることには全く異論がない。もちろん、ペナントレースを戦っている指揮官には迷惑な話だが、もともと「野球選手のマーケット」なのだ。
そういう形でNPBとの移籍のルートができるのは喜ばしいことだ。それに「移籍金」という実利もある。
 
マエストリの前には、フランシスコ・カラバイヨというベネズエラ出身の強打の野手がBCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスからオリックスに入団。この選手はその後、群馬、オリックスと2回移籍を繰り返し、2016年も群馬でプレーした。
 
マエストリののち、2015年には新潟アルビレックスBCからミッチ・デニングがヤクルトに移籍、さらに香川オリーブガイナーズからドリュー・ネイラーが中日に移籍した。
こうした選手はタイトルを取るような成績を残してはいない。実績を残さなければすぐにリリースされる。身分は不安定だが、それだけ気軽にピックアップされるということは、外国人選手にとってはチャンスが増えるということでもある。カラバイヨのように独立リーグとNPBを往復するような選手も出てきている。
 
四国アイランドリーグplusでは、有料で外国人選手のトライアウトを実施している。NPBや他のステージでプレーしたいと願う選手たちは、トライアウトで自らの実力を知り、チャンスをつかむことが可能になる。
いわば独立リーグは「市場」としても機能しているのだ。
 


フランス国籍で、高知ファイティングドッグスに在籍したアンヴィ
 

野球を通じた「国際交流」も始まりつつある

 
また独立リーグには全く別の目的を持った外国人もやってくる。
野球が盛んでない国から、独立リーグに野球を学びに来る選手たちだ。
徳島インディゴソックスに所属するミャンマー出身の投手ゾーゾー・ウー、高知ファイティングドッグスに所属するブルキナファソ出身の内野手サンホ・ラシィナなどの選手がそれだ。
こうした選手は技術的にはまだまだだ。ゾーゾー・ウーの速球は130km/hに届かない。ラシィナの内野守備も心もとない。
彼らは、NPBを目指しているわけではない(もちろん、実力が付けば目指す可能性はあるが)。独立リーグで野球を基礎から学び、これを母国に持ち帰って、普及させるという使命を帯びているのだ。最初は試合に出ることがない練習生として契約、ある程度技量が上がってからは、試合にも出場している。
ゾーゾー・ウーは2015年にはミャンマーに凱旋帰国して、現地の試合で投げている。
彼らは野球だけでなく、挨拶やマナーなど、日本流の生活文化も学んでいる。
こうした野球を通じた「国際交流」も、独立リーグが果たす役割でもある。
四国アイランドリーグplusの経営者たちは、「国際交流」から一歩踏み出して、こうした「野球後進国」を新たなマーケットともとらえている。野球の普及活動をする中で、全く手つかずだった地域から有望な素材を見出したり、放映権やライセンスなどのビジネスの展開をすることも考え始めている。
 
これまでのプロ野球の、日本-アメリカの一元的な関係から、日本-世界の多元的な関係へ、独立リーグはNPBでは考えられない「野球の多様な世界」を求めて活動しているのだ。



ブルキナファソ出身、高知ファイティングドッグスでプレーするサンホ・ラシィナ