11月15日、明治神宮大会開幕! 二桁安打に防御率0点台、首都大学野球リーグ4連覇の東海大学に注目

山本祐香

大学野球には、春季リーグ戦後に行われる「全日本大学野球選手権大会(以下、大学選手権)」と秋季リーグ戦後に行われる「明治神宮野球大会(以下、明治神宮大会)」、年間2つの全国大会があります。
 
春は、各連盟のリーグ戦(一部地域でトーナメント戦あり)で優勝した27チームがそのまま大学選手権に出場できますが、秋は東京六大学野球連盟、東都大学野球連盟を除く連盟の上位チームはさらにそれぞれの地区大会へと進み、残り9の明治神宮大会出場枠を争うこととなります。
 
今回は、その中でも「横浜市長杯争奪 第15回関東地区大学野球選手権大会(以下、横浜市長杯)」で準優勝し、関東五連盟(神奈川大学野球・関甲新学生野球・首都大学野球・千葉県大学野球・東京新大学野球)第二代表として明治神宮大会へ出場する東海大学に注目しました。
 

 

全勝優勝でリーグ戦4連覇の東海大学(首都大学野球連盟1位)

 

春の大学選手権でベスト4という成績を残した東海大は、先発投手の防御率が0点台、チーム打率は2割8分超えで10連勝と、この秋も圧倒的な強さで4季連続73回目のリーグ優勝を果たしました。その勢いのまま臨むのは、明治神宮大会出場をかけて戦う横浜市長杯です。
 

 

関東五連盟代表10チームがトーナメント戦に挑み、明治神宮大会に出場できるのは勝ち残った2チームのみ。東海大は、初戦の関東学院大(神奈川大学野球連盟1位)戦で苦しみながらも6-5でサヨナラ勝ち、そして準決勝の上武大(関甲新学生野球連盟2位)戦には6-2で勝利し、4年ぶりの明治神宮大会出場を決めました。

東海大でまず注目すべきは、エースの山﨑伊織投手(3年・明石商)。大学日本代表にも選ばれた、今最も観るべき投手のひとりです。


大学日本代表では中継ぎを経験し「中継ぎ投手のしんどさがわかり、先発はしっかり投げて次に繋げなければならないと改めて感じました。レベルが高い中でいろいろなピッチングでしっかりと抑えられるというのは、自信にも繋がりました」と、大きく成長した様子の山﨑投手。その後の首都大学野球秋季リーグで、5試合に登板し2完封を含む4勝0敗、自責点はたったの1で防御率0.20という成績を残し、最高殊勲選手・最優秀投手・ベストナインの投手3冠に輝きました。

井辺康二コーチから「力を抑えて投げるピッチングも大事」とアドバイスを受け、この秋完投を意識した力配分で投げるようになった山﨑投手は、リーグ戦初戦から1安打15三振完封、しかも9回の先頭打者に打たれるまでは無安打という圧巻のピッチングを披露しました。
 

最速153km/h、常時145~151km/hのストレート、そしてスライダー、シュート、カットボール、チェンジアップなどの変化球で三振の山を築いていきます。山﨑投手自身は「球数は多くならない方がいいので三振を狙っているわけではないけど、結果的にそうなっているときもあります」と言いますが、ストレートで見逃し三振を奪えているときは調子が良いように感じます。

横浜市長杯では、初戦の関東学院大戦と準決勝の上武大戦の2試合に先発。

 

初戦は山﨑投手らしからぬ不安定な立ち上がりで、あっという間に1点を失います。しかし、その後は無死三塁のピンチも無失点で切り抜けるなど、毎回ランナーを出しながらも粘りの投球を続け8回1死の場面で降板。チームは勝ったものの、試合後は反省の言葉を口にしました。

 
「入りがちょっと悪くて、そのままずるずるいってしまった感じでした。あと今日は、追い込んでからの球が甘く、打たれるというケースが多くて。(相手打線は)粘って粘ってボール球も変化球も全然振らへんし、しつこくていい打線でした。厳しいコースに投げてもファウルにされて、しんどくなって内に入った球をヒットにされました。そんな流れが悪い中、打線がしっかり点を取ってくれました。ピッチャーがゼロに抑えたらもっと楽な試合だったので、次はしっかりしないといけないですね」

 
そして、雨天順延もあり3日後となった準決勝、上武大戦。先頭に安打を許したもののその後は危なげないピッチングを続け、5回に訪れた無死一、二塁のピンチは海野隆司捕手(4年・関西)の二塁けん制にも助けられ無失点で切り抜けます。この回最後の打者には、キレのある149km/hのストレートを投げ、見逃し三振を奪いました。
 
ここで肘に若干の違和感があったため、大事をとってブルペン陣にマウンドを託します。目標はさらに先の日本一、大切なのは明治神宮大会にベストな状態で臨むことです。
 
結果、東海大は勝利し明治神宮大会への出場を決めました。
 
試合後、山﨑投手は「まだ疲れはちょっとあったんですけど、その分丁寧に投げられました。春はベスト4で終わってしまったので、短い期間に試合が何試合も続きますが、調子を落とさず一戦一戦大事にやっていきたいと思います」と、明治神宮大会への思いを話してくれました。
 
初戦、ランナーがいない場面ではワインドアップで投げていましたが、準決勝ではランナーがいてもいなくてもセットポジションから投げていた山﨑投手。「(前の試合では)ランナーを溜めてからの方がいいボールがいっていたので、振りかぶるとやっぱりブレるというかそういうのがあるし、最初からセットポジションでいってみようかなと思いました」
 


ワインドアップで投げる山﨑伊織投手

 
そして、明治神宮大会はDH制ではないため、投手も打席に立つことになります。高校時代、故障でマウンドに立てない時期には外野手として試合に出ていた山﨑投手。当時は打順も1番で4割超えの打率を残したといいます。そのバッティングを大学で初めて観られることが楽しみだと伝えると「僕、バッティングもいいし足も速いですよ(笑)。僕が一番楽しみです(笑)」とこの日一番の笑顔を見せます。

明治神宮大会では、山﨑投手のバッティングにも注目してください。

 

高校野球ファンも必見!? その打線とは 

 

バッティングといえば、この秋の東海大学はとにかく打つ、打つ、打つ。首都大学野球リーグ戦では、10試合中4試合が二桁安打でした。横浜市長杯でも関東学院大戦で15安打、上武大戦では13安打とその打撃力はホンモノであることを証明しました。
 
シーズン中、打順の変更は何度かありましたが、高校野球ファンをもワクワクさせるのは「1番・千野啓二郎内野手、2番・宮地恭平外野手、3番・杉崎成輝内野手」という3選手の並びなのではないでしょうか。3人は2015年に東海大相模高校が全国高等学校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園で優勝したときのメンバーで、この並びは当時と全く同じなのです。

過去にはこの打順が機能しないときもありましたが、この秋はこれがベストの打順だと感じました。1番の千野選手はリーグ戦首位打者です。3番の杉崎選手も「ずっと一緒にやっているメンバー。信頼感があるのでやりやすいです」と言います。

また、元々どこからでも点が取れる打線ではありますが、春に続いて2度目のリーグベストナインに選ばれた串畑勇誠内野手(3年・広陵)を9番に置いたことで、より繋がりができ得点力が増していました。安藤強監督が「切り札」と話す、リーグ戦3打数3安打、代打成功率100%の長倉蓮主将(4年・東海大相模)もいます。
 




今大会、上武大戦では、6打点全部を3番の杉崎選手と5番の藤井健平外野手(4年・大阪桐蔭)で叩き出しました。

 

藤井健平選手は今大会、打率.545の活躍で敢闘賞を受賞した



杉崎選手は「春より調子いいですね。春はうしろで打つようにして失敗しちゃったので、高校のときのように前でさばく打ち方にしました。中に入れすぎないでさばくんです。その方が自分に合っているので、ヒットにできます」と好調の理由を話しました。
 
また、打撃だけではなく軽快なショートの守備もチームを勝利に導きます。1年春から試合に出場し注目を浴びてきた杉崎選手でしたが、昨年は左足首の怪我で手術をしたため試合に出られず、もどかしい日々を過ごしました。そして迎えた最後の1年。
 
「ピッチャーが下級生ばかりなので、守備で助けてあげられたらいいかなって。春の大学選手権はベスト4だった悔しさもありますし、その中でも4年生がもう最後っていう。4年生が一番多く(スタメンに6人)出ているので、それを割りきってできているから結果もついてきていると思います」
 
そうチームの快進撃について話した杉崎選手、明治神宮大会でも勝負強いバッティングを見せてくれるに違いありません。

 

残る課題は?

 

 
横浜市長杯・決勝は、城西国際大(千葉県大学野球連盟1位)と戦いました。相手チームは決勝という舞台でエースを先発させましたが、山﨑投手を休ませるという苦渋の選択をした安藤監督は、3人の投手で決勝を戦うことに決めました。結果、守備にも精彩を欠いた部分があり3-5で今季初の負けを喫してしまいました。
 
「やっぱり決勝は主力のピッチャーが投げなきゃダメですよね。それが今日はできなかったので悔しいですね。でも、若い高杉(勝太郎/2年・東海大札幌)と宮路(悠良/2年・東海大高輪台)がね、今回この試合で出てきてくれたというのがあるので。この秋、ものすごくエラーが多くてそれをピッチャーがカバーしていたので、そういうところがやっぱり、こういう一発勝負の大事な試合で出てしまったのではないかなと思います。リーグ戦と違ってトーナメントなので、常日頃できなくちゃいけないことができない方がやっぱり負けますよね。練習の中でひとつひとつだと言い続けているのですが、こういうときに出てしまいます」


今後の活躍が期待される高杉勝太郎投手


いつも「どんな試合もまずは守備から」と言っている安藤監督は、3失策に厳しい顔でした。勝って乗り込む明治神宮大会と、負けて迎える明治神宮大会、選手たちの目に映る景色は違うのでしょうか。



思えば5季ぶりのリーグ優勝となった2018年春、チームは主力選手を何人も欠いた状態でした。この秋が「73回目」の優勝という数字を見てわかる通り、“勝つことが当たり前”を求められる東海大。周囲の大きな期待に応えることができなかった2年間は、相当なプレッシャーを感じていたことでしょう。次こそは優勝しなければ、という中で主力に故障者が続出。それでもなんとか総力戦で戦い抜いて5季ぶりの優勝を果たしたとき、安藤監督は涙でしばらく言葉を発することができませんでした。

 
そのときに新しい戦力として台頭したひとりが、当時2年生の山﨑伊織投手です。あれから東海大学は4季連続の優勝、そして大学選手権ベスト4という結果も残しました。今再び、東海大の層の厚さ、地力の強さを発揮するときではないでしょうか。


明治神宮大会、東海大の初戦は11月16日(土)16時~、東北福祉大(東北三連盟代表)と戦います。

この時期、夜はかなり冷え込みますので防寒対策をしっかりして神宮球場へ。
今年最後の熱い戦いを見逃すわけにはいきません!


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山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。