競技人口は900人以上!日本の「身体障がい者野球」とは?

白石 怜平

日本では国技とも言えるほど人気のスポーツである野球。
プロ野球、高校野球、メジャーリーグetc…
テレビやインターネットなどで試合やニュースを見る機会は多いかと思います。
 
そんな日本の野球の中で、みなさんは「身体障がい者野球」についてご存知でしょうか?
身体障がい者野球とは、身体にハンデを持つ選手がプレーする野球のことです。

そこにはどんな人が参加し、通常のルールとどんな違いがあるのか。
今回は現状の課題や国際化の観点を交えながらご紹介します。

身体障がい者野球の歴史

日本における身体障がい者野球は、1980年代前半に神戸市で有志を募り結成したのが始まりとされています。

神戸市から全国に活動が広がっていき、1993年1月には「日本身体障害者野球連盟」が設立されました。その年の5月には「第1回全国身体障害者野球大会」が行われ、以降毎年開催されています。
 
そして、1998年には「公益財団法人日本障がい者スポーツ協会」の認定種目団体となりました。
身体障がい者野球の連盟登録数は現在37チームで、競技人口は900人を超えています。

身体障がい者野球の登録資格

選手の登録資格は、身体障がい者手帳を所持する肢体不自由者と療育手帳(※)を所持する選手が対象になります。
年齢や性別の制限はありませんが、聴覚・視覚・内部障がい者の登録は現状できません。
チームが日本身体障害者野球連盟に登録するには、選手登録者12名以上が条件になります。

(※) 都道府県の知事が発行している知的障がい者(および知的障がい児)が補助を受けるために必要な手帳 

身体にハンデを持つ選手がプレーする身体障がい者野球。選手の持つ障がいの種類もそれぞれ異なる。

 

身体障がい者野球のルール

使用するボールは健常者と同じ軟式球を使いますが、身体障がい者野球独自のルールが存在します。
 
◆バント
身体障がい者野球では肢体にハンデを持つ選手がいるため、原則としてバントは禁止されています。
ただし、障がいの度合いによりバントのような動作しかできない選手においては、その打球は有効となります。
 
◆走塁
盗塁、振り逃げ(※1)は禁止です。
また、捕手の体にボールが触れていればその時点でボールデッド(※2)になり、走者は進塁できません。
しかし、捕手に触れずボールが逸れた場合、走者は1つだけ進塁が可能です。その間に捕手が投げて間に合えばアウトになります。
 
その他は健常者のルールと同じです。
ただし、エンドラン(※3)の際に打者が空振りした場合、飛び出した走者は戻れなければベースタッチでアウトになります。
牽制が逸れたら、通常のルールと同様にフリーで進塁することができます。

身体障がい者野球で得点を重ねるには、走者を次の塁へいかに進めるかといった機動力がカギとなります。

(※1) 振り逃げ:3ストライク目を捕手が捕球できなかった場合、打者は一塁に走ることが可能。
ただし0 or 1アウトかつ走者が1塁にいる場合は不可。
(※2) ボールデッド:試合が止まり、プレーが無効となること。
(※3) エンドラン:投球と同時に走者はスタートし、打者は投球をバットに当てることで早く進塁を狙う戦術。

◆打者代走制度
下肢障がいなどで走塁が困難と認められた選手には打者代走が適用されます。
代走者は、三塁と本塁を結ぶファールラインの延長線からバックネット方向へ1メートル後退した地点がスタートラインです。

試合での打者代走。捕手後方のラインからスタートする。


代走者はベンチ入りしていれば、スターティングメンバーでなくても出場可能です。
ただし、塁上で打席を迎えることは禁止されており、もし打順が回って自身の打席時に塁上にいたらアウトになります。

上位のチームでは、走る専門・打つ専門と役割を明確にした起用をしており、身体障がい者野球の戦略の1つになっています。 

身体障がい者野球が抱える課題

身体障がい者野球の課題の1つは、障がいの軽い選手が集まっているチームが強い傾向にあることです。

歩行障がいや重い障がいの方が参加する時、「試合に出場できないのではないか」と感じてしまうことでモチベーションが低下し、結果参加しなくなっているためです。
一方で、ルールを変えてしまうと選手が揃わなくなるという問題が起こるため、運営側はジレンマを抱えています。

身体障がい者野球がさらに発展していくためは、障がいの重さに関係なく参加できるように、各チームが門戸を広げていくことが重要になってきます。

また、健常者の野球でも同様ですが、身体障がい者野球においても
「勝利に徹底する」
「みんなで楽しく野球をやる」
この両立も課題となっています。
 
勝利を優先する場合は走れる選手をメインに起用するため、歩行障がいや車いすの選手はベンチスタート、展開によっては試合に出場できないケースも起こり得ます。
また、練習に欠かさず参加する選手や一生懸命声を出して鼓舞する選手などがいても、普段参加できないがより動ける選手が試合に出場することがあります。ここに引け目を感じてしまう選手も少なくありません。
 
首脳陣はこの相反する2つの考えと日々向き合っているのです。
各チームはこれらを両立させようと、練習試合や定期練習の機会を増やすことで、普段来られない選手が参加できるよう努めています。

各チームはグラウンドを各自で確保し、練習機会を増やすなど工夫を凝らしている。

身体障がい者野球の国際化

日本の身体障がい者野球は、世界基準と異なる部分があります。それはボールです。前述の通り、日本では軟式球を使います。
しかし、海外でプレーしている選手は硬式球を使用しています。そのため、今後日本が世界の舞台で戦うためにはまずはボールを国際基準に合わせる必要があります。
 
2006年には日本の提案で、"もう一つのWBC”と呼ばれる「世界身体障害者野球大会」が始まり、2018年には第4回を迎えました。
加えて2020年には東京で五輪が開催されることもあり、障がい者スポーツの注目が高まっています。
今回の大会では、身体障がい者野球は競技種目にないですが、世界的に普及するためには大会への参加は欠かせません。
 
このように、競技人口が増えて国際化に向けた動きもあり、日本の身体障がい者野球は転機を迎えているのかもしれません。
 
現在、全国28都道府県に身体障がい者野球連盟登録チームが存在します。
もし、お近くの地域にチームがありましたら、是非一度活動をご覧になってみてください。
 
次回は、千葉県で唯一の身体障がい者野球チーム「市川ドリームスター」についてご紹介します。

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白石 怜平
1988年東京都出身。 趣味でNPBやMLB、アマチュアなど野球全般を20年以上観戦。 現在は会社員の傍ら、障がい者野球チームを中心に取材する野球ライターとしても活動。 観戦は年間50試合ほどで毎年2月には巨人をはじめ宮崎キャンプに訪れる。 また、草野球も3チーム掛け持ちし、プレーでも上達に向けてトレーニング中。