女子プロ野球は究極のエンターテイメント、華麗なプレーと笑顔の溢れるオールスターゲーム~9月1日、女子プロ野球秋季リーグ開幕~

山本祐香

突然ですが、あなたは“プロ野球”の世界に何を求めますか?


魅力的なプレー、スター性、子供たちの憧れの存在、ファンサービス、エンターテイメント性、ファンとの一体感、グッズの充実、ホームページやSNSによる情報の充実など、選手に求めること、球団に求めること、人それぞれ多岐にわたることでしょう。


きっとどの球団もそのすべてを追求しているに違いありませんが、あとからあとから要望や不満が出てくるのもファン心理というもの。しかし、ひとたび球場に足を運ぶと、そんな細かいことはどうでもいいじゃん!と思えるくらい虜になってしまう世界があります。


様々なプロスポーツがある中で、こんなに観客と選手が一体になって楽しめる場所はないのではないか、改めてそう思わせてくれた唯一無二の存在“女子プロ野球”。


その日、神宮球場にはたくさんの笑顔がありました。




 

星桜vs.京都雅、神宮球場で華々しい球宴

 

7月15日、神宮球場で行われた「花鈴のマウンドpresents日本女子プロ野球リーグ2019オールスターゲーム」。東日本出身vs.西日本出身、レジェンドvs.フレッシュなど、毎年様々なテーマでチーム分けをして私たちを楽しませてくれる女子プロ野球オールスターゲームですが、今年は星桜vs.京都雅というチーム分けで試合が行われました。





星桜・京都雅は、主人公の桐谷花鈴が「女の子だって甲子園で野球がしたい!」と奮闘する漫画『花鈴のマウンド』の中に出てくる高校名です。花鈴の所属する都立星桜高校女子硬式野球部と、花鈴の最大のライバル柊木美玲が主将を務める私立京都雅高校女子硬式野球部、そんな漫画の中のライバル対決を実現。


チーム分けはなんと、ドラフトによる指名制。星桜チームの監督を務める小林雅英投手総合コーチと京都雅チームの監督を務める石井義人野手総合コーチが、順に選手を指名していきました。

星桜チーム・小林雅英監督


京都雅チーム・石井義人監督


星桜・小林監督が「春と夏のプレーを見て、キーパーソンになると思った」と、最初に選んだのは京都フローラ・三原遥内野手。そして、京都雅・石井監督は「まずはセンターラインを固めたい」と「スピードがあり、ゲームを作れる」埼玉アストライア・古谷恵菜投手を指名。それから「チームの要の捕手を」と京都フローラ・村松珠希捕手、「センターライン、最後はセンター。センターといえば」と京都フローラ・三浦伊織外野手を指名しました。


そして、完成したチームがこちらです。
 


 

試合当日は、開門前から球場前のスペースに『花鈴のマウンド』のブースやグッズ販売など各種ブースが並び、賑わいを見せました。いつもとは違った独特の雰囲気に、訪れたファンも普段より高揚しているように感じます。


19時、いよいよプレイボール。試合は初回から動きます。1回表、星桜の攻撃、先頭バッターの加藤優選手が右前打で出塁すると、2死から四番の岩谷美里選手がフェンス直撃の二塁打を放ち、スタンドやベンチからは大きな歓声があがります。2死二、三塁のチャンスで、バッターボックスには中村茜選手。3球目を右前に運び、星桜が先制しました。


(岩谷美里選手)



(先制打を打ちパフォーマンスをする中村茜選手)


「白線を越えたら真剣にやろう。初めて見る人にも楽しんでもらおう」という小林監督の言葉通り、プレー中は真剣な表情、それ以外のときはたくさんの笑顔やパフォーマンスを見せてくれる選手たちに、スタンドにも笑顔が溢れます。


4回表、三原遥選手の中前適時打でさらに1点を加えた星桜に対し、京都雅はなかなか得点を挙げることができません。2-0のまま試合は最終回の7回へ。7回裏、京都雅の最後の攻撃、1死からバッターボックスには走攻守すべてにおいてトップレベルのレジェンド、三浦伊織選手が立ちました。森若菜投手が投じた2球目、捉えた打球は右中間へ。センターを守る三浦由美子選手がダイビングキャッチを試みましたが、打球は後方へと転がります。これを見た俊足の三浦伊織選手は、迷うことなくホームを狙います。





セーフか、アウトか。





審判の判定はアウト! ここで京都雅チームはこの試合で1度だけ使うことが許されている「リクエスト」を要求します。





そして、協議を終えて戻ってきた審判。再びの判定は…





やっぱりアウト!





選手全員でズッコケるという団体芸を見せてくれた京都雅チーム。盛り上がるスタンド。グラウンドとスタンド、空間的には離れているのにみんなで一緒に楽しんでいるような気分にさせてくれる、女子プロ野球選手のみなさんにはそんな力があります。プロ野球選手という憧れであり遠い存在でありつつも、心はファンに寄り添ってくれている。女子プロ野球を観ていると常に感じることのできる感覚ではないでしょうか。





試合は2-0で星桜が勝ち、“オールスターゲームMVP選手賞”にはフェンス直撃の二塁打を含む2安打の岩谷美里選手が選ばれました。





リーグ戦でも毎試合勝利チームの選手たちが踊るダンス、今回は花鈴のマウンドオールスターゲーム特別ダンスをチアチーム「キラリス」や約200名の子供たちと一緒に披露してくれました。






全力で楽しそうに踊る選手たちを見ている観客にも、自然と笑顔が広がります。プレーの格好良さで魅了し、団体芸やダンスのかわいさで魅了する、これこそ究極のエンターテイメントではないでしょうか。



(イニング間には、男子だけでなく女子も高校野球の全国大会を甲子園球場で行える日が来ることを願い、スタンドのファンにも配られたペーパーボードを「女の子だって甲子園!」という発声と共に掲げる)
 

野球が好き、という気持ち


プロの中でも選りすぐりの選手が集うオールスターゲームは、盛況のうちに幕を閉じました。今回、初めて女子プロ野球を観た方たちに率直な感想を聞くと「失礼を承知で言うと、正直こんなにスピードやパワーがあるとは思っていなかった。本当に面白くてまた来たいと思った」「守備がとても上手でびっくりした」「選手たちが踊ったりするとは思わなかった。楽しそうでこっちまで笑顔になった。野球自体も心から楽しんでやっているように感じた」という声があがりました。





石井監督は「男子も一生懸命やっているけどそれ以上に一生懸命やっているところや、男子にはない華やかなプレー」を女子プロ野球の魅力として挙げていましたが、それもきちんと観客に伝わっていたようです。




そんな石井監督と小林監督は元プロ野球選手。女子プロ野球に関わることになって感じたことは両極端だったようです。石井監督は「スピード感などは少し男子とは違うけど、同じ野球をやっている」と感じたそうですが、小林監督は「全く違う野球と感じました。男子と同じ条件でやっているけど、例えば同じ大きさのボールでも手の大きさが違ったりするのでそれに合わせて工夫できるところは工夫して指導します」と言います。


女子と男子は、体型の違いだけではなく根本的な思考の違いなどもあります。そんな女子を指導することについては、「どういう形で女子に教えればいいか、と最初は考えたけど、やってみたら選手たちも結構熱心に聞いてきたりするんですよね」と石井監督。小林監督は「そこは割り切って指導をしています。20歳の娘がいるんですよ。娘と似たようなものだと思っています」と笑います。





そして両監督の共通認識だったのが「一生懸命やっている」「野球が好きなんだなと感じる」というところ。その気持ちがプレーに乗るからこそ、より華やかに見えるのでしょう。




オールスターゲームは幕を閉じましたが、女子プロ野球のシーズンはまだまだ終わりません。9月1日からは秋季リーグが始まります。春季リーグ、夏季リーグは関西、東海地方で行われてきましたが、秋季リーグは関東で開催されます。ホームページで試合日程をチェックして、ぜひその目で女子プロ野球を観てください。


きっとあなたも、女子プロ野球の虜に!


日本女子プロ野球リーグHP

https://www.jwbl.jp/

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。