第90回都市対抗野球大会に向けて~それぞれのJABA北海道大会~

山本祐香

5月19~24日(雨天順延を含む)、JABA北海道大会が開催されました。過去2年はJABA北海道大会兼東北大会として東北地方で行われていたため、3年ぶりに道外のチームを招いての単独開催です。参加したのは、


<北海道>
JABA北海道硬式野球クラブ・日本製鉄室蘭シャークス・航空自衛隊千歳・北海道ガス

<東北>
トヨタ自動車東日本・TDK

<関東>
日本製鉄鹿島・JX-ENEOS

<東海>
JR東海・トヨタ自動車

<近畿>
大阪ガス・ミキハウス


の計12チーム。優勝チームは秋に行われる「社会人野球日本選手権」への出場権を手にすることができますが、日本製鉄鹿島とトヨタ自動車はすでに他のJABA大会で優勝し出場権を獲得しています。また、7月13日から行われる「第90回都市対抗野球大会」への出場が決まっている日本製鉄室蘭シャークス、日本製鉄鹿島、JR東海、トヨタ自動車、大阪ガスについては大会前最後の公式戦。それを踏まえて、この大会は各チーム優勝を目指しながらも、それぞれ目的を持って臨む重要な大会でもありました。

優勝したのは、JX-ENEOS。前月行われた都市対抗西関東予選で、死闘の末4年連続代表権獲得を逃すという苦渋をなめたJX-ENEOSは、そのうっぷんを晴らすかのように7回コールド勝ち2つを含む3連勝で予選ブロックを通過し、準決勝でミキハウス、決勝でトヨタ自動車を破り頂点に立ちました。





昨年までのクラブチームから企業チームとして再スタートしたミキハウスの善戦や、地元チームの中で唯一決勝トーナメントに進出したJR北海道の地力の強さなど、注目すべき場面がたくさんの大会となりましたが、今回はその中から7月13日から始まる「第90回都市対抗野球大会」に出場するチームを取り上げていきます。

 

昨年の覇者、大阪ガス

 

出場チームにとって、都市対抗予選後初めて、そして都市対抗本戦前最後の公式戦となったJABA北海道大会。昨年の都市対抗で優勝した大阪ガスだけは、推薦出場となるため予選を戦うことはありませんでした。他の全チームが過酷な都市対抗地区予選に挑んでいる間は練習試合を行うこともできず、直前にミキハウスとの練習試合を行ったのみでこの大会を迎えました。

そのため、この大会を通して試合勘を取り戻す必要がありました。予選ブロック2戦目のトヨタ自動車東日本戦では、1回表から1死一、三塁のチャンスを作るも得点するには至らず、先発した鷹羽信貴投手(1年目・東浦-日本福祉大)の前に打線は沈黙。得点できぬまま2点ビハインドで迎えた9回表、やっと打線が目を覚まします。連打で同点に追いつくと、無死満塁から登地慶輔外野手(6年目・常葉菊川)が走者一掃の適時二塁打を放ち、さらに1点を加え逆転勝利を収めました。

橋口博一監督は「もっと早く打てれば良かったんですけど。収穫を挙げるとすれば、(予選ブロックを突破するために)負けられない試合だったので“緊張感”かな」と試合を振り返り、決勝打を打った登地選手については「足も速くて、昨日(初戦)も内野安打を2本打っている。今、売り出し中の選手です」と、6年目ながらフレッシュな注目選手として挙げていました。

初優勝を果たした昨年は、都市対抗の醍醐味である補強選手制度を利用し、地区予選敗退チームから3人の補強選手を加えて都市対抗本戦に臨みました。ディフェンディングチャンピオンとして迎える今年は、補強の権利はなく純粋な大阪市代表・大阪ガスとして挑みます。一年間ユニフォームの左袖に“黒獅子エンブレム”をつけて戦ってきた誇りを胸に、どんな戦いを見せてくれるのか楽しみです。

 

激戦区の東海地区代表、JR東海

 

予選ブロック2戦目、得点できぬまま9回裏を迎えたJR東海は2死一、三塁から同点とし、延長10回、タイブレーク(無死一、二塁、継続打順)の末2-1で日本製鉄鹿島にサヨナラ勝ちを収めました。10回まで投げぬいたのは、川本祐輔投手(4年目・尾道-亜細亜大)。





ご自身も投手出身で投手を育てることに定評のある久保恭久監督は、川本投手を始め計算できる投手がたくさんいると話し、この日サヨナラ打を打った代打の川瀬遼大外野手(4年目・愛産大工-福井工大)については「以前もノーアウト満塁で打順が回ってきてダブルプレーになってしまい、今日は同じシチュエーションで久々のバッターボックス。褒められるような当たりではないかもしれないけど、間をすり抜けていくような打球でいい形で勝てた」と労いました。

予選ブロック3戦目にはTDKと戦い、3点先制されるも8回に2点、9回にも2点を加え逆転勝ち。決勝の2点適時二塁打を打ったのは、牛場友哉捕手(5年目・常葉橘-亜細亜大)でした。指名打者の津川智内野手(6年目・広陵-近畿大)が申告敬遠となったあとに打ったサヨナラ打でしたが「元々バッティングはそこまで自信がないし、津川さんが敬遠されても普通に考えればそうだよなと思いました」と言いつつも「積極的にいけるタイプなので、思い切っていけていい結果につながりました。変化球を狙っていて、打ったのはチェンジアップでした」と笑顔を見せました。

都市対抗に向けての課題としては「前半の3回までに点を入れようとチームで話していたのに、前の試合もこの試合も後半は粘り強く戦えたけど相手に先制されてしまいました。前半でしっかり点を取りきるようにしたいです」と前を見据えていました。都市対抗では先制をしてチームに勢いをつけられるのか、注目です。

 

北関東第一代表、日本製鉄鹿島


予選ブロックで1勝2敗と苦しんだ日本製鉄鹿島は、2戦目に5-1でJR北海道を破ったものの、1戦目はTDKに0-2、3戦目はJR東海に1-2の延長10回サヨナラ負けと、打線が投手を助けることができませんでした。この大会の予選ブロックは札幌円山球場と岩見沢市野球場に分かれて行われており、岩見沢市野球場にいた筆者は円山球場で行われた2戦目のみ観戦することができなかったのですが、1戦目に先発した飯田晴海投手(2年目・常総学院-東洋大)は6回を投げ1失点、3戦目に先発した伊藤拓郎投手(2年目・帝京-横浜DeNA-BC群馬)も6回2/3を無失点と、好投を目にしました。


 

特に伊藤投手は1戦目に2番手で登板、2回を投げ7人に対し野手がエラーした打球も含め全てゴロを打たせ、先発した3戦目も20個のアウトのうち11個がゴロアウトでした。“打たせて捕る”の見本のような投球は、都市対抗でも必見です。

 

5年ぶりの北海道代表、日本製鉄室蘭シャークス

 

ここ何年も北海道の頂点に君臨してきたJR北海道を破り、昨年秋、悲願の社会人野球日本選手権出場を果たした室蘭シャークスが、この夏、都市対抗本戦の出場も決めました。このJABA北海道大会を都市対抗に向けての準備と位置づけているチームはいくつもありましたが、それが顕著に表れているのが室蘭シャークスでした。

結果だけ見れば1勝2敗の予選ブロック敗退ですが、普段とは違うスタメンと采配で挑むことにより、戦略の幅が広がったのではないでしょうか。今年から指揮を執る比嘉泰裕監督は「この大会はチームの戦力の底上げという位置づけです。都市対抗では補強選手も入りますし、競争意識を持って頭角を現してもらわなければならない選手たちを出しました。誰が出ても戦力を落とさないチーム作りです」と話します。




また、室蘭シャークスには佐々木大樹捕手(5年目・花巻東-東海大)という頼りになる捕手がいますが、今年2人の新人が入りました。今大会ではその丹代匠哉捕手(1年目・旭川南-山梨学院大)と田畑瑛仁捕手(1年目・浦和学院-中央大)に「佐々木に任せきりにならないよう、いつでも準備ができているようにして欲しい」という思いを込めて、一試合フルでマスクを被らせました。

様々な試みからどんな布陣が出来上がってきたのか、都市対抗本戦が楽しみです。

 

世代交代の時を迎えるトヨタ自動車

 

佐竹功年投手(14年目・土庄-早稲田大)を始めベテランばかりに頼っているわけにはいかないと、ここ1,2年、積極的に若手を使って育成に努めているトヨタ自動車。強さを保ったまま世代交代をするというのは簡単なことではありません。そんなトヨタ自動車も、優勝を目指しながらも今大会を都市対抗に向けての準備と位置づけているチームのひとつでした。

藤原航平監督は「都市対抗まで1ヵ月を切っている中で、選手同士が競争する大会」と言い、予選ブロック3戦目で先発した諏訪洸投手(3年目・下妻二-亜細亜大)を「今年初先発だったけど、持ち味を出して投げてくれて、味方にいい影響を与えてくれたと思います」と、本塁打も打ち大暴れをした4番の沓掛祥和内野手(3年目・慶應-慶應大)を「うちの中心選手。ナイスバッティング」と評価していました。

予選ブロック1戦目でマスクを被っていた小畑尋規捕手(2年目・北照-立正大)は北海道札幌市出身。北海道での公式戦は高校3年の夏以来ということで「北海道の気持ちいい気候でできて、帰ってきたなという感じがします」と微笑んでいた小畑選手も「バッティングは二の次でいいので、とにかく守備でしっかりアピールして本戦でレギュラーで出られる用意をしたいです」と気を引き締めていました。

藤原監督が「うちの中心選手」と言う沓掛選手は、17打数8安打、打率.471という成績で首位打者賞に輝きました。調子が悪いときはいろいろな人にアドバイスをもらい、自分でかみ砕いでいくという沓掛選手。野手だけではなく佐竹投手などにもアドバイスをもらうそうです。「投げるのも打つのも一緒と思っているのと、自分のバッティングフォームが独特で、野手はそれぞれのバッティングフォームがあるからアドバイスが意外と参考にならない場合もあって、ピッチャーのアドバイスは逆に素直だったりするんですよね。佐竹さんは一流のピッチャーなので、そういう人からアドバイスをもらいます」





過去、都市対抗本戦などの大きな大会では目立った結果を残せておらず、そこを周りからいじられることもあるようで「今年はチームを勝たせるバッティングをします」と気合十分。宣言通り本戦でも暴れてくれるのか、ぜひ注目してください。



第90回という節目を迎えた今年は、出場チームを例年の32チームから36チームへと増やして13日間でトーナメント戦が行われます。大人になるにつれ、いつのまにか忘れてしまった熱い気持ちを思い出させてくれる、それが都市対抗野球大会です。初日と準決勝は2試合、決勝は1試合ですが、他の日は、一度東京ドームに入ってしまえば3試合観ることもできます。

社会人野球の頂点を目指して戦う選手の雄姿を、ぜひ東京ドームで目に焼きつけてください。

 

日本野球連盟サイト
www.jaba.or.jp/index.html

スポニチアネックス都市対抗試合速報
https://www.sponichi.co.jp/baseball/shakaijin/2019/toshitaikou/dasoku.html?o

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山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。