全日本大学野球選手権大会、開幕!! 東海大学、星槎道都大学、東洋大学をピックアップ

山本祐香

 

6月10日、第69回全日本大学野球選手権大会がいよいよ幕を開けました。

 

各リーグの戦いを制して出場を決めた3チームをピックアップし、見どころをお伝えします。

 

 

首都大学野球連盟代表・東海大学

 

3季連続72回目のリーグ優勝を果たした東海大学は、その数字が表す通り常勝軍団です。しかし、昨年の春まで4季連続で優勝を逃していました。そのため、現在の4年生は昨年の春に、大学生になって初めての優勝を経験。チームの背景には勝つことを常としているプライドを感じるものの、選手たちからは初々しさを感じました。

 

それから丸1年が経ち、再び常勝軍団と化した東海大の選手たちからは、独特の雰囲気が醸し出されるようになりました。取材を受けているときも、記者から投げかけられる質問にただ答えていくのではなく、繰り出される言葉だったり、答えるまでの間だったりで、選手たちがその場をコントロールしているかのようにさえ感じます。なるほど、試合で感じる独特の雰囲気もこれか、と腑に落ちました。
 

(リーグ優勝を決めた瞬間)


東海大のチームの全体的なイメージを言葉で表すとすれば、「チームの状態が良いときも悪いときも気づいたら勝っている」です。相手チームにリードされている状況でも劣勢を感じさせません。むしろこれは罠なのではないか、油断させておいて時が来れば一気に猛攻をしかけるのではないか、という懐疑心が膨らんでしまうほどです。

 

この圧倒的な場の支配力はどこから来るのでしょうか。長倉蓮主将、そしてスタメンに名を連ねる千野啓二郎選手、杉崎成輝選手、宮地恭平選手は東海大相模高校出身の4年生。2015年の全国高等学校野球選手権大会、夏の甲子園の優勝メンバーです。リーグ戦序盤には、1番千野、2番宮地、3番杉崎という当時と同じ打順が見られるなど、高校時代から今でも一緒に活躍を続ける選手たちがチームを支えているのは言うまでもありません。
 

(帝京戦でホームランを打った千野選手)


リーグ戦終盤には1番千野、2番串畑勇誠選手(3年・広陵)と打順を組み替えたことで、攻撃力がグンと上がりました。優勝を決めた試合でも、初回の攻撃で打率.400(リーグ2位)の千野選手が出塁し、打率.394(リーグ3位)の串畑選手が適時打を打って先制、これが決勝点となりました。

 

幸先よく武蔵大に2連勝で勝ち点を獲得した翌週、日本体育大に1勝2敗で勝ち点を落とした東海大。安藤監督は「個の力は持っている、チームとしてはどうなのか。絶対一丸となってここから6勝しようよ」と選手たちに話しました。そこから本当に6連勝をしてしまうところが、東海大の強さです。勝ち点4で筑波大(8勝4敗)、日本体育大(8勝4敗)と並びましたが、9勝2敗、勝率.818と勝率で上回り逆転優勝を決めました。

 

試合後「ファーストストライクからいってやろうという気持ちがあったので、いけて良かったです。初回から先制点がとれたので、そこからどんどんどんどん緩めずに点を取っていこうと言っていました」とコメントしていた串畑選手は、安藤監督から選手たちに“絶対一丸”という話があったことについて「練習のときもみんなでひとつという感じで、1つのプレーに対してみんなで話していけたりしたので、全員で一丸になれたかなと思います」と話しました。


(優勝を決める適時打を放った串畑選手)

 

打力もある東海大ですが、やはり特筆すべきは投手力でしょう。原田泰成投手(4年・東海大望洋)と山﨑伊織投手(3年・明石商)という安定感のある先発投手が試合を作り、万が一ピンチが訪れたとしても左腕の松山仁彦投手(3年・東邦)が火消しにロングリリーフにとフル回転してくれます。勝利が見えてきたら、9回は小郷賢人投手(3年・関西)の出番です。大学野球界で、山﨑康晃投手の登場曲であるゾンビネーション「Kernkraft 400」がこんなに似合う男は見たことがありません。最速155㌔を誇るストレートとキレの良いスライダーを武器に打者を打ち取っていく様は、一見の価値ありです。
 

(優勝が決まった試合で8回無失点の好投をした山﨑伊織投手)
 

そんな投手陣の球を受けるのが、侍ジャパン大学日本代表にも選ばれた海野隆司選手(4年・関西)です。二塁送球タイムが1.73秒という強肩の選手ですが、3年春には首位打者、今季も打率.316をマークするなど打撃も魅力の選手です。

 

大学選手権には2年連続38回目の出場。昨年は悔しい1回戦負けとなってしまった東海大、今年はどんな戦いを見せてくれるでしょうか。

 

 

札幌学生野球連盟代表・星槎道都大学

 

2季連続15回目のリーグ優勝に輝いた星槎道都大。昨年、一昨年と秋には優勝をしていましたが、春の優勝は5年ぶりでした。札幌学生野球リーグは、他のリーグに比べても打力が高いと感じます。とにかく、バットを振る! 振る! 振る! そんな中で5勝1敗、防御率0.41という成績を残す怪物といえば、そう渕上佳輝投手(4年・堀越)です。

 

マウンド上では淡々と打者を抑え、試合後はおっとりとした語り口調で取材に答える渕上投手。防御率0点台でリーグ戦を終え納得しているか、と訊かれると「結果で見たら納得できるのですが、1節の北翔大が1点で負けたので(0-1で惜敗)。結果は良くても内容が、というところがあるのでそこをつぶしていきたいと思います」とさらに高みを目指して反省点を述べます。


(渕上投手)

 

コースをつくのではなくアバウトにストライクゾーンで勝負するようになったそうで「四球、四球でいくよりはゾーンで勝負した方がいい。ゾーンで勝負すると打たれることは仕方ないことなので、打たれてもそんなに慌てることもないです」と、昨秋より球数が少なくなったことが実感できたそう。また、大学選手権でどんなピッチングをしたいかと問われると「まずは1勝。今までやってきたことをそこで出せれば」と語っていました。

 

2年前の明治神宮野球大会では、神宮球場のブルペンで投球練習をするのみだった渕上投手。今大会、初めてのマウンドに上がります。

 

打の中心人物といえば、4番に座る生田目忍選手(4年・水戸工)でしょう。この日の試合でも先制の2点適時打を含む2塁打2本と2死球と活躍し「一打席一打席、命をかける気持ちで打席に立っていたので、結果につながって良かったです」と話した生田目選手は、驚異の打率.467で首位打者賞、ベストナイン、そして最高殊勲選手賞に輝きました。


(常に喜びのアクションが大きい生田目選手)

 

打率が示している通り気づけば出塁しているので、生田目選手が打席に立ったら一瞬たりとも目を離してはいけません。他にも池田英人選手(1年・横浜創学館)や松田彪瑠選手(2年・釧路江南)など、下級生の活躍も見逃すことはできません。

 

そして、忘れてはいけないのが大栗飛人主将(4年・駒大苫小牧)の存在です。二宮監督も「いいキャプテン」と評価する大栗主将。渕上投手は「このチームは大栗のチームなので」と言い、生田目選手は大栗選手のグローブを使い、ベンチからは足の遅い大栗主将に「歩くな、走れ」とヤジが飛ぶ。みんなに愛されるキャプテンは熱い男です。

 

「冷めて野球やりたくないっていうか。とにかく一球に全員が入り込むという、小学校、中学校のときから全員で勝つというのが一番強いチームだと思っているので。特に高校が駒大苫小牧で、そういう気持ちで絶対負けないというのを作ってきました」

 

一節が終わって3勝2敗と、これ以上負ければ優勝は危うい状況。大栗主将はナインにこう声をかけたそうです。「プレッシャーがかかって一節はやられてたんで、負けたら俺が全部責任取るからって言いました。3年生以下が力をうまく発揮できてなかったんで、負けたら俺の責任だから思い切っていけ、って」

 

そして「負けたら俺が責任取るから、と言いながらもやっぱり自分もグラウンドで結果出したいというのはあるんですか?」という質問が飛ぶと「自分が出るとか出ないとかじゃなくて、チームが勝つために自分がどうあるべきかが大事だと思うんで」と言い、さらに「それは、どうあるべきなんですか?」という質問には「どんなときでもチームをいい方向に導くことですね。絶対にキャプテンだけは諦めてはいけない。気持ちが強い方が勝つんだっていうのをいつも伝えてきました」と答えます。どんな質問にもはっきり相手の目を見てスラスラ答える、常に自分の中に答えを持っている証拠です。

 

「自分たちは日本一を目指してやってるんで、まだまだ全然甘い部分がたくさんあるので練習で詰めて、次は日本一を絶対取れるようにします」と力強く宣言してくれた大栗主将。神宮球場での熱い戦いが始まります。

 

東都大学野球連盟代表・東洋大学

 

強い。とにかく強いです。時々隙を見せるけど、やっぱり最後の最後には地力を発揮する。そんな印象のチームです。大学野球ファンにお馴染みの「戦国東都」という言葉ですが、リーグ戦終盤までその名に違わぬ厳しい戦いが繰り広げられ「これは…どこが優勝するか全然わからないな」と思っていたのに、最終的には勝ち点5の完全優勝を成し遂げる。そんな東洋大の歴代の主将はいつも、何か重いものを背負っているような独特なオーラをまとっています。誇り、でしょうか。

 

佐藤都志也主将(4年・聖光学院)を始め、津田翔希選手(4年・浦和学院)、小川翔平選手(3年・霞ケ浦)、酒巻翔選手(3年・成田)、など下級生から試合に出ている選手は多いですが、全て野手です。投手で経験豊富なのは、1年生のときからマウンドに上がっている村上頌樹投手(3年・智辯学園)、その次が山下雅善投手(4年・東邦)というところでしょうか。昨年主に投げていたプロ入り三人衆や他の4年生投手が卒業し、新1年生を加えて新しく投手王国を作り始めました。

 

センバツ優勝投手である村上投手は、その能力を高く評価され1年生のときから登板機会を与えられました。最初こそ不安定な投球をすることもあり、センバツ優勝投手でもやはり大学野球の壁は厚いのかと思わせましたが、2年時には登板機会が少ないながらも安定感が増してきます。そしてこの春、完全に覚醒。杉本監督が「持ち球にフォークが増えたんですよ。揺れ気味でえげつないんですよね。相手はきついかと」とコメントするなど、大きく成長した村上投手は6勝5完投4完封、防御率0.77という成績を残しました。昨年、まさかの初戦でコールド負けを喫した大学選手権、初めてマウンドに上がる村上投手はどのようなピッチングを見せてくれるのでしょうか。


(村上投手)

 

そして、やはり東洋大の柱となるのが佐藤都志也主将・捕手です。リーグ戦が始まったばかりの時期に主将として心掛けていることを訊いてみたところ「“チームで勝つ”ということですね。今年はあの3人(プロ入りした上茶谷投手、甲斐野投手、梅津投手)が抜けた状態からスタートしたチームで、チーム力で戦ってこうという話をしているので、全員で頑張っていけたらいいかなと思っています」と話しました。

 

では、その上級生投手3人が抜けてしまい、今年は捕手の自分が主体となってやらなければならないという中で意識していることはあるのでしょうか。「投手とコミュニケーションをしっかりとった中で、根拠のあるサインを1つでも多く出すということだけは意識しています。根拠なく出して打たれたら、なんでそうなっちゃったの?となりますが、根拠があった中でそれが打たれても、ピッチャーにごめんねって言って根拠を話しているので、そんなに気にすることはないんです」


(佐藤主将)

 

侍ジャパン大学日本代表にも選ばれた佐藤主将は、強肩で俊足、何よりも打撃においてとても頼りになります。そんな佐藤主将、4月中旬の薄手のコートを着ていても寒いなという日に、半袖でプレー。「自分のポリシーですね。やっぱり半袖で気合い入れてやっていこうって」寒い日の半袖といえば、3年前の明治神宮大会決勝の明治大・善波監督を思い出します。いくら優勝がかかっているから気合いを入れると言っても11月の半袖は無謀だと思いましたが、見事優勝を果たしました。優勝するためには半袖要員が必要なのかもしれません。

 

 

ここまで、大学選手権に出場する3チームをご紹介しました。それぞれチームカラーの違う27チームが全国から集い、頂点を目指して戦います。11日、12日は神宮球場と東京ドームで、それ以降は神宮球場で試合が行われます。全日本大学野球連盟のHPをチェックして、ぜひ球場に足を運んでください。

 

全日本大学野球連盟・全日本大学野球選手権大会HP

https://www.jubf.net/alljapan/index.html

山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。