創設10周年、進化を続ける女子プロ野球のここに注目①~コンベンション2018を振り返る~

山本祐香

1月31日、女子プロ野球リーグの新体制が発表されました。女子プロ野球には、京都フローラ・愛知ディオーネ・埼玉アストライアの3つのトップチームとレイアという育成チームがあり、毎年選手の入れ替えがあります。節目の10年目を迎える女子プロ野球リーグ、今年はどんな盛り上がりを見せるのでしょうか。3月23日の開幕に向け、まずは2018年12月25日の東京都内のホテルにて開催された「日本女子プロ野球リーグ コンベンション 2018」の様子、そして今年大注目の選手を本人のコメントと共にご紹介します!

 

選手自らおもてなし、コンベンション2018

 

あそこに立っているのは、山崎まり選手(埼玉アストライア)。開幕直後の4月8日、川口市営球場で行われた対京都フローラ戦でサヨナラタイムリーを打ったあのヒロインが、自ら案内板を持ってコンベンション会場へと誘導してくれます。さらに進むと、一列に並ぶ選手たちの姿が。優しい笑顔で口々に「こんにちは!」と声をかけてくれます。豪華なお出迎えの中受付を済ませると、こちらも選手自ら席まで案内してくれるというおもてなし。私を案内してくれたのは、チーム最多タイの5勝をあげ、太田幸司賞を受賞した京都フローラの龍田美咲投手でした。強気なピッチングとは真逆の、優しい笑顔が印象的な選手です。




太田幸司さん

コンベンションが始まりました。日本女子プロ野球機構スーパーバイザーである太田幸司さんの挨拶のあとは、オープニングムービーで2018年度を振り返ります。“繊細なのにダイナミック”な女子野球。素早い反応から華麗な送球をする内野手、大胆にフライに飛び込む外野手の姿が見られる守備には、特にそれを感じます。次々と映されていく好プレーにボルテージが上がっていき、優勝シーンでは思わず涙が溢れました。一年の締めくくりの会が始まったばかりなのに、来シーズンはもっと生でこのプレーの数々を観なければならないという使命感に駆られます。
 
そして、いよいよ各賞の表彰です。まずは「2018年度シーズン(ヴィクトリアシリーズ)優勝」「2018年度年間女王」「第8回女子野球ジャパンカップ優勝」のチーム表彰から。
 
シーズン優勝はそのシーズンのリーグ戦を制したチームが手にするものですが、では年間女王との違いは何なのでしょうか。3チームでシーズンを戦い優勝が決まった後、さらに2位のチームと優勝チームが女王決定戦を行います。言わば、日本シリーズを制したチームの称号が年間女王なのです。2018年はチーム打率3割超えの京都フローラが3年ぶりのシーズン優勝、年間女王には下克上を果たした愛知ディオーネ(シーズン2位)が輝きました。
 
そしてもうひとつの「女子野球ジャパンカップ」というのは、
・各カテゴリーの全国大会で上位になったクラブ、大学、高校のチーム
・プロの年間上位2チーム
・プロ3位のチームとプロ育成チーム“レイア”も参加する「ジャパンカップ出場決定戦」で勝ち上がったチーム
で行われるプロアマ混合の大会です。優勝したのは京都フローラ、これで二冠を達成しました。




 
京都フローラの選手たちがステージに上がり、シーズンの優勝賞金500万円をはじめ、監督、コーチ、スタッフにもそれぞれ賞金が贈られました。さらにジャパンカップの優勝賞金200万円も贈られ、川口知哉監督のスピーチです。
 
「今シーズン“改革”をテーマに取り組んできました。選手がコロッと替わる年を迎え、若手の選手がいい活躍をしてくれました。ベテランの選手がそれをうまく引っ張ってくれたからこそ、若手の選手たちの活躍があったと思います。来シーズンは(女子プロ野球が)10年目を迎えますので、より活躍できるような形をとっていきたいと思います。来シーズンも女子プロ野球リーグ全体を応援していただければと思います」
 
盛大な拍手で送られた京都フローラに続き、愛知ディオーネの面々がステージに並びます。年間女王の賞金は250万円、そして監督賞も贈られました。





 

続いて、個人タイトルの表彰が行われます。2018年はこのような結果となりました。


 
≪ゴールデングラブ賞≫
投 手 谷山 莉奈(埼玉) 守備率1.000 6完投
捕 手 村松 珠希(京都) 守備率.992
一塁手 田口 紗帆(埼玉) 守備率1.000
二塁手 浅野 桜子(京都) 守備率.962
三塁手 只埜 榛奈(愛知) 守備率.938
遊撃手 岩見 香枝(埼玉) 守備率.983
外野手 三浦 伊織(京都) 守備率1.000
外野手 榊原 梨奈(愛知) 守備率1.000
外野手 佐藤 千尋(埼玉) 守備率.988



 
≪ベストナイン≫
投 手 小西 美加(京都) クローザーとして勝利に貢献
捕 手 村松 珠希(京都) 打率.331、巧みなリード
一塁手 田口 紗帆(埼玉) チーム内最多安打、最多盗塁
二塁手 三原 遥(愛知)  チームの得点源
三塁手 岩谷 美里(京都) 最多打点、最多安打
遊撃手 厚ヶ瀬 美姫(愛知)9年連続打率3割超え、華麗な守備
外野手 三浦 伊織(京都) 走攻守全てを兼ね備える
外野手 三浦 由美子(愛知)シーズン後半に打撃が開花
外野手 楢岡 美和(埼玉) 勝利打点4を記録

 


≪野手部門≫
首位打者賞(4年ぶり3回目)・最高出塁率賞(4年ぶり2回目)・最多盗塁賞(7年連続7回目)
三浦 伊織(京都フローラ/外野手) ※打率.446、出塁率.518、27盗塁
 
最多打点者賞(2年連続2回目)・最多安打者賞(2年連続2回目)
岩谷 美里(京都フローラ/内野手) ※34打点、59安打
 
本塁打者賞(初受賞)
みなみ(京都フローラ/外野手) ※リーグ初となる2打席連続本塁打
奥村 奈未(京都フローラ/内野手) ※自身初を含む2本塁打
 
最多勝利打点者賞(初受賞)
中村 茜(京都フローラ/外野手) ※勝利打点5
 
最多犠打者賞(2年連続2回目)
三原 遥(愛知ディオーネ/内野手) ※17犠打、打率も3割超え


 

≪投手部門≫
最優秀防御率投手賞(6年ぶり3回目)・最多セーブ投手賞(4年ぶり2回目)

小西 美加(京都フローラ) ※防御率1.84、11セーブ
 
最多勝利投手賞(初受賞)
松谷 比菜乃(愛知ディオーネ) ※育成チーム「レイア」から昇格1年目で8勝
 
最多奪三振投手賞(2年連続5回目)
里 綾実(愛知ディオーネ) ※42奪三振、女子W杯では3大会連続MVP
 
最多投球回投手賞(初受賞)
谷山 莉奈(埼玉アストライア) ※6完投、94回2/3
 
最高勝率投手賞(初受賞)
堀田 ありさ(愛知ディオーネ) ※勝率.750
 
最多ホールド投手賞(初受賞)
坂東 瑞紀(京都フローラ) ※ホールド2


 

≪リーグ部門≫
角谷賞<MVP>(2年連続2回目)

岩谷 美里(京都フローラ/内野手) ※昨年史上初の打撃3冠、今年は2冠、長打率.606
 
角谷賞<MVP>(4年ぶり2回目)
三浦 伊織(京都フローラ/外野手) ※野手部門3冠、ベストナイン、ゴールデングラブ賞
 
最優秀新人賞<野手部門>
村松 珠希(京都フローラ/捕手) ※打率.331、若手ながら投手陣を引っ張るリード
 
最優秀新人賞<投手部門>
松谷 比菜乃(愛知ディオーネ) ※8勝で最多勝利投手


 

太田幸司賞(初受賞)
龍田 美咲(京都フローラ) ※育成チームのレイアから昇格1年目でチーム最多タイの5勝

 
 

選手のスピーチの中で印象に残ったのが、最優秀防御率投手賞と最多セーブ投手賞を受賞した小西美加投手の言葉。現役最年長の35歳、今もなおチームの柱として活躍しています。
 
「見てくださっている方がいるときには、ケガをしている素振りだったりしんどい表情というのは一切しないようにしています。それがプロだと思います。でも、実際ふたを開けてみると自分の体も結構ガタもきていますしボロボロな部分もありますが、プロとして恥じないプレーをするために自分の管理を自分でする、弱いところは鍛える、そういった選手であり続けたいと思います。(太田幸司さんの『40歳現役も見えている』という言葉を受けて)40歳までできるかはわかりませんができるところまで、多くの野球少女、野球選手に負けないようにこれからも精進してきます。子供たちと一緒に、野球が大好きな気持ちを前面に出して女子野球界から日本を、そして世界を元気にできるようにみんなで頑張っていきたいと思いますので、これからもよろしくお願い致します」
 
女子プロ野球の創設から今までを支えてきた小西投手(女子プロ野球誕生物語:https://www.jwbl.jp/birth-story/)の言葉には力がありました。プロ野球選手はどうあるべきなのか、プロ野球選手ができることはなんなのか。
 
ここ数年、女子野球部、女子野球チームも増えてきていますが、以前は限られた地域に少数しかなく、野球をやりたければ男子に交じってやるしかない、しかし女子は入部を認められないこともある、という状況でした。そのため、中学や高校に進むと野球を諦めざるを得ない人が多く、小西投手も中学生から続けることができなくなりました。それでもいつかできる日が来ることを信じ、陸上部、ソフトボール部で汗を流しながらも、常に「この動きが野球にどう役立つか」を考えて鍛えていたそうです。


 

20歳でやっと女子硬式野球チームで野球ができるようになり、その後プロ野球選手となった小西投手。これからの女子野球界を支えていく野球少女や後輩たちにその背中を見せるため、プロ野球選手になって9年経った今も大好きな野球に貪欲に、真摯に向き合い続けています。そんな小西投手だからこそ、胸に響く言葉が出てくるに違いありません。

 

クリスマスの贈り物


各賞の表彰が終わったところで、休憩時間となりました。

この日はクリスマス…ということで、なんと選手から会場にいる私たち一人ひとりにプレゼントが。私のところには台湾人のシェン・ジァー・ウェン選手(京都フローラ)が来てくれました。

 

通訳の方を通して少しお話もでき、とても心温まる時間。会場入りのときのお迎えからこのようなプレゼントまで選手がとても丁寧に接してくれるので、こちらも女子プロ野球のために何かできないだろうか、という気持ちが湧いてきます。どの選手も驚くほどスピーチが上手で接客も丁寧、さらには笑顔も素敵と非の打ち所がないのに、それに加えて野球のプロときたら、もう最強の軍団ではないでしょうか。
 
休憩のあとには、そんな女子プロ野球選手への第一歩を踏み出した新入団選手の紹介がありました。凛とした姿でステージに立つ女子プロ野球機構創設10年目のルーキーたちは、どんな未来を創っていくのでしょうか。




 

最後は、女子プロ野球創設者である、わかさ生活・代表取締役社長の角谷建耀知さんのご挨拶です。10年目という節目の年を迎える女子プロ野球。この10年、裏で支えるスタッフと共に選手も全力を尽くして女子プロ野球の面白さを伝え、実際に球場に足を運ぶファンも増やしてきましたが、今後も存続させていくためにはさらなる取り組みが必要になります。角谷さんのお話では、スタッフ、選手だけではなく、応援する側にもその危機感の認識と覚悟を問うていました。



 
次回、2018年に大活躍、そして2019年も目を離すことのできない4選手を本人のコメントと共にご紹介します。


 
※文中の選手の所属球団は2018年度のものです
 
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山本祐香
好きな時に好きなだけ神宮球場で野球観戦ができる環境に身を置きたいとふと思い、OLを辞め北海道から上京。「三度の飯より野球が大好き」というキャッチフレーズと共にタレント活動をしながら、プロ野球・アマチュア野球を年間200試合以上観戦。気になるリーグや選手を取材し独自の視点で伝えるライターとしても活動している。記者が少なく情報が届かない大会などに自ら赴き、情報を必要とする人に発信する役割も担う。趣味は大学野球、社会人野球で逸材を見つける“仮想スカウティング”、面白いのに日の当たりづらいリーグや選手を太陽の下に引っ張り出すことを目標とする。