ブラジルの子供たちと日本の子供たちのサッカーの違い【第3回】~ 日本のサッカーがもっと強くなるには? ~

Spportunityコラム編集部

母校、桐光学園サッカー部グラウンドを視察。あの中村俊輔〜現高校2年/日本代表として活躍するエース、FW西川潤など歴代が取組んで来た現場。(写真©ケイタブラジル)


●「ブラジルの子供たちと日本の子供たちのサッカーの違い」について、
【第1回】、【第2回】とブラジルと日本の違い、そして子供たちのサッカーと大人の関わり方について語っていただきました。

(第1回: ブラジルの子供たちと日本の子供たちのサッカーの違い ~ 「ブラジルと日本の節目の2018年」に再確認するサッカーと社会のあり方 ~ )

(第2回: ブラジルの子供たちと日本の子供たちのサッカーの違い【第2回】 ~  「未来を担う子供たちのサッカーと大人たちの関わり方」を考えてみる。  ~)

まずは改めて、座談会のメンバーについて再度ご紹介します。 

◆ プロフィール紹介

◆ 中田 直人さん (以降、中田氏) 

幼少期よりサッカーとともに成長、少年時代は某ユースチームに所属し、どっぷりサッカー少年。オトナになっても社会人サッカーチームでプレーする傍ら、少年サッカーを長年指導。現在は一保護者として携わる。まさにサッカーとともに人生を歩んできた。本業では株式会社イデュース 代表取締役。ショッピングセンターの運営会社を経営。地域との連携をテーマにスポーツクラブ・スポーツチームのタイアップを数多く手がける第一線のスーパービジネスパーソン。

 

◆ KTa☆brasil(ケイタ☆ブラジル)さん (以降、ケイタ☆ブラジル氏)

東京うまれ、神奈川育ち。Newsweek誌が「世界が尊敬する日本人100」に、UNIQLO初の世界同時展開広告「FROM TOKYO TO THE WORLD」に選出。パリコレ〜F1GP〜W杯〜本場リオのカルナヴァルまで、世界各地で活躍するミュージシャン、DJ、サッカー関係者、打楽器指導者。ブラジル代表ユニフォームのマークでおなじみの“CBF”=ブラジルサッカー連盟による公式番組“CBF TV”が、“外国人でありながら“80年代前半以来、ブラジルの歴代サッカー選手やクラブチーム、サッカー界と長く深く関わる人生”を番組特集した(現在唯一の日本人)。今年も南米リベルタドーレス杯番組や、CBFブラジル杯公式プロジェクトに招集されている。ブラジルとのご縁は幼少より約35年。10代より両国を往復し続ける活動は2018年で22年目。ブラジル政府各省/リオ市観光局事業公式実績者。サンバ応援の本場:リオの名門クラブチームC.R.Vasco da Gamaの名物応援団サンバ打楽器隊員を経て、スタヂアム殿堂刻名の現上級会員。同クラブの様々な公式プロジェクトに招集され、東日本大震災発生時には南米で一番早く企画・実行された救援プロジェクトの一員でもある。 日本でもTV/FM/新聞/雑誌/WEBなどのメディアではサッカーや音楽を中心にブラジルや欧米ラテン諸国のプレゼンターとして活躍。TBSスーパーサッカー、スポナビ、NIKE FOOTBALL、SONY FOOTBALL、JTB、excite公式ブログ・・・様々な現場とメディアでレポーター、MC、コラム寄稿を歴任。Jリーグ、Fリーグの選手や関係者との関わりも深い。リオ五輪では日本政府のパビリオンJAPAN HOUSEでの音楽イベントを11本プロデユース。命名した共著書「リオデジャネイロという生き方」(双葉社)他、寄稿も数多い。
http://www.natsu-biraki.com/artist_ktabrasil/

 

◆ 埜口 隆之さん (以降、埜口氏) 

小学3年生までは野球ばかりやっていたが、家族の転勤により南米へ2年間移住。そこでサッカーと出会い、帰国後はキャプテン翼ブームもあり中学から部活動でサッカーを始める。以来、高体連、社会人サッカー、シニアサッカーとカテゴリーを移しながらもサッカーライフを楽しんでいる。一方で休日にはあざみ野FCのコーチとしても活動。体幹トレーニングコーチ、しつもんメンタルトレーニングインストラクター、ライフキネティックトレーナーなど、指導、育成にかかわるような資格も取得し、サッカー少年とともに歩んでいる。本業ではキヤノングループのシステムエンジニアとしても活動のかたわらグロービス経営大学院でMBAも取得、志を高め、仕事にコーチに活躍中。

 

第3回では、前回の少年少女のサッカー事情を踏まえつつ、日本のサッカーがもっと強くなるには?を語っていきます。

 

◆ 日本のサッカーがもっと強くなるにはどうすべきか?

日本がもっと強くなるには、世界でさらに勝てるようになるには、
これからの日本を背負う少年たちは何をすべきだろうか?

(中田氏)
社会性から考えると、サッカーって日本人に向いてないですよね。笑


(ケイタ☆ブラジル氏)
そうですね。笑 前回も述べましたが、日本はきちんと組織化と運営がなされている一方、自分で疑問を持ち、考え、判断して、行動する事が好まれない風潮がまだありますよね?
しかし、サッカーとは組織的なチームプレイと同時に、まさにこの「自由な発想や臨機応変さと自主性」が求められる「国際基準」のスポーツ。
だから、これを克服しないといけない。ただ、これは子供が1人だけで出来る事ではないので、チーム全体、指導者や社会性そのものの概念や考え方が変わって行かなければ難しいと思います。
「上」の指示、許可や「周囲の同調を」常に気にしていないと動けないようでは強豪国より強くなれないかもしれません。

(ケイタ☆ブラジル氏)
このような「サッカーという世界基準のスポーツ」で勝つためには、「島国世間での日本人らしさ」ではなく「世界の世間とやり方の中で通用する日本人らしさとは何か?」をより追及して行く事が強くなる事に繋がると思います。
これは単に外国にカブレたり、、外国のヨコモジ名とか応援とか表層的な事だけを真似したり、日本人の良さを喪失するのではなく。
世界基準での「個人、その集まりである日本の強い芯」作りですね。
「日本人の何が世界で強みとなり、何が弱みなのか」を若い頃から家庭や学校やクラブで徹底的に、皆で実践しながら考察し、世界で通用する日本へと楽しく進化できたら良いですね。
土俵は異なりますが、日本のサッカーは世界水準と繋がれていて、たとえば日本国内の音楽シーンよりも世界で通用している点もあります。
日本で有名とされる音楽アーティストで広い世界で通用/知られているアーティストや曲はかなり限られていますよね。
その点、「サッカーはとにかく始めから世界基準」で、既に欧州や中南米各リーグで実績を出した選手も少なくありません。
「サッカーをするという事は世界の世間と水準と繋がる事ができる」と思います。
将来プロ選手にならなくても、そういう視点と感性を、サッカーやボールを通じて小さな頃から養って行く事が、多様性と複雑なグローバリゼーションの時代に生き抜いて行く力にもなると思います。

 

【世界を知り、日本を知る】・・・現在のグローバリゼーションのはじまりと言える「大航海時代」を先駆け、日本にまで到達し影響を与えたポルトガルの世界地図。キリシタン大名で知られる大友宗麟のお膝元、大分駅前広場にある巨大なレプリカの石畳(写真©ケイタブラジル)。

(ケイタ☆ブラジル氏)
それではどうすれば良いのか?
…その為には日本や日本人の歴史、日本人の気質や精神性を改めて知る事も必要かもしれません。
「日本人や日本社会の特性」を日本人が知る事を。今の日本の社会が、国が、ルールが、教育がどうしてこうなのか?
国際社会とは何なのか?
現在の日本に大きな影響を与え続ける歴史のターニングポイント、「外圧による明治維新」や「世界大戦参戦と敗戦」、「戦後の対米隷属社会」とは何なのかなど、改めて疑問を持ち、再度検証して知る事も必要かと思います。
また日本人の決定的かつ歴史的な欠点である、「島国根性や国際経験不足による客観性や国際的な見識の無さ」は地理・物理的な問題なので、若い頃からどんどん世界に(英語圏に偏重せず)出て行き、世界の常識とマナーと文化を知り、広い世界での実経験から、多様性や柔軟な発想を身につけて欲しいですね。
お金もかかるし、簡単な事じゃないと思いますが。
でも、あえて極端な事を言えば、日本人が日本にばかり住まないで、家族ごと海外移住を目指せたら良いですね。

 

豊臣秀吉によりローマへと派遣された日本代表=「天正遣欧少年使節」のモニュメントが関連する大分に沢山。仙台・伊達政宗の「慶長遣欧使節」をはじめ、日本各地には「未知なる世界の大海原へと一歩踏み出した」先人の勇気と情熱ある足跡が色々残っています。世界を知り初めて見えて来る日本へ。
 

リオデジャネイロにある日本人学校。ブラジルでは日本食やお酒、漫画やアニメだけでなく、書道、華道、武道、和太鼓、そして旧来の日本の文化、日本人の精神や美学について親しまれ、敬愛されています。
 

「自分を磨く子」…リオデジャネイロにある日本人学校の体育館に貼られた標語。日本より断然国際的で、闊達でタフなブラジル社会の中で、自分が日本人である事を小学生や中学生時代から意識し、自分を磨く事を意識して育つのかぁと訪問時につい思い、ハっとしました。


(ケイタ☆ブラジル氏)
社会・世間的な環境、そして親の生き様は最も子供に影響を与えますからね。
それには日本人がもっと世界各地に出て行って働ける法制や仕組み、親がもっと自由度を持てる社会作り、都会に負けない地域の盛上り、国や国籍、企業や就労のあり方なども、皆でもっと考えてディスカッションしていい筈です。逆に、世界各地の人に日本での永住権や国籍を与えるか。
また二重国籍を認めるなど。サッカーに限らず、全ての物事は繋がっています。実際、世界中の人々や民族は歴史的に移動や混交を繰り返しています。
そして2018年W杯のモロッコ代表のあり方、またスペインやロシア代表にもブラジル人がいる事、ブラジル自体が世界連合の様な多人種混交の国である事も1つの具体的な事例として日本と色々と比べてみると色々な発見や気付きがあると思います。
最近では大坂なおみ選手が注目されていますが、そういった意味でも彼女は素晴しいモデルとして我々に多くのヒントを与えてくれますよね。


動画:ブラジル代表の胸にあるマーク、「CBF」ことブラジルサッカー連盟本部に招集され、その公式番組に外国人として史上初めて特集されてしまいました。 内容は・・・日本での生い立ちから、サッカーを通じて世界を知った事、Jリーグで来日した歴代選手との出会いとご縁の連続、そしてロナウヂーニョとの共演やVASCOの応援団〜リオのカルナヴァルで知られるSAMBAの打楽器奏者となり、本場で20年以上活動してきた事など。

 

「クラブ文化」については第1回、2回で触れたが、クラブに出入りしてユースからトップチームの練習を見て学ぶ事も日常的だ。ユースからの育成実績で知られるC.R.Vasco da Gamaにて撮影。


(ケイタ☆ブラジル氏)
僕は特に「日本の社会環境」について触れてますが、実際に指導されている中田さんや埜口さんがどの様に思われるか、また具体的な指導としてどんな具体的なアイディアで実践し、クリアしていけるかなどおうかがいしたいです。 


(埜口氏)
最近ではサッカー指導者の質も上がってきているのではと感じています。
Jリーグができて25年。
選手、審判、そして指導者の質が徐々に上がってきているのでしょう。インターネットで情報が簡単に手に入るようになったというのもあるでしょう。
※サッカー界の指導者は新しい物好きなのかもしれませんが、いろんなものを取り入れようとしますね。

サッカー界では良く「フリーズコーチング」「シンクロコーチング」「ミーティング」の3つのコーチング方法があるといわれています。
この3つ目の「ミーティング」が選手たち自らできているかどうかでチーム力、あるいはこの成長が大きく変わってくるのではないかと思います。
試合中のハーフタイムのすごし方を見ていると、コーチのかかわり方が見えてきますね。
コーチがベンチに座って、選手に話をしているのか。選手たちがベンチに座ってコーチの話を聞いているのか。選手たちが輪になって自らが話し合っているのか。


(埜口氏)
私たちは練習や初めて取り組むことに関してはある程度の指針を示したり見本を見せたりします。その後は必ずそれをしなければならないわけではなくこれまで積み上げてきた何かを+αを考える事ができる選手が増えて欲しいと思っています。
そこで失敗することはチャレンジの結果なので全て許容する。
そんな環境が普及できたら、2世代後ぐらいには社会が変わっているのではないかと思います。

公園なんかでも禁止事項でがんじがらめにするのではなく利用者みんなが一緒に遊んだり、多少の擦り傷などができても騒がずみんなで考えてどういう風に遊びを作るか考えるようになれば文化として「ボトムアップ」という考え方、「ディベート」と言われるような議論ができるような社会になるのではないかと思います。


(中田氏) 
私は現在指導者ではないので、具体的なアイデアは申し上げにくいですが・・・。

保護者として子育てで気をつけたのは「広い世界を見る機会」をつくることです。
と言っても海外旅行をするとかではなく、何か習い事をするなら幼稚園や学校の知り合いのいないところ、「とにかく友人、知り合いをたくさんつくれ!」と言い続けました。
元来、男は群れやすい、しかも日本人はその傾向が強いと思います。
しかし海外へ挑戦し戦っていくにはひとりでどんな仲間のなかでも生き残っていけるようになることは必要です。
そのような逞しさを幼年期から身に着けることにより、子どもの自主性は育っていくのではないでしょうか。
    
日本サッカーの育成システムは長年の協会の努力もあり、素晴らしいかたちで発展し続けていると思います。
ただ、選手を野菜に例えるなら形のいいものばかりを集め、美しく見えるように育て、市場に出しています。
形の悪いものの中にものすごく美味しかったり、栄養があるものもありますが、なかなかうまく育てられないのが今の日本だと思います。
今の子供は習い事としてのサッカーばかりです。
他のスポーツをやる時間はありません。
海外を見渡せば、ルーニーはボクシング、アザールは柔道など他のスポーツ、特に格闘技に少年時代に勤しんだ選手が多くいます。
日本もこれから教科書通りの育成ではなく、様々な角度からの育成がもっと必要だと思います。
それにはやはり指導者の育成にさらに力を入れていくべきだと私は思います。


(コラム編集部)
深いですね。
子供たちの多様な価値観、柔軟な発想、失敗を恐れず自らチャレンジする精神など、サッカー、日本に限らずあらゆる社会・場で必要とされる能力を育むには、やはり指導者自身もそのように育てられるよう、日々成長が不可欠なんですね。
指導者の「成長」で子供も「成長」する。中には大人になってまたさらに良い指導者として、より良いプレーヤー・人間性を育てていく。
こういった好循環が、日本のサッカー、社会性をより成長させていくんでしょうね。


(ケイタ☆ブラジル氏)
話は変わりますが、中田さんも日本のメディアについておっしゃいましたが、日本代表選手へのインタビューや報道のあり方も、業界的にコントロールされているのか、面白さや多様性が少ないと今回のW杯で特に感じました。
メディアこそ、物事の画一化的な捉え方や全体主義の社会風潮を煽らないでくれると良いですね。
またマスメディアの戦略的なプロパガンダを鵜呑みにしない、リテラシーを若い頃から磨く事、それが「一次情報」であるか?や情報の裏付けのチェック、真実を見抜く力、世の中にあふれ過ぎている情報を処理する能力を身につける事も大切です。
サッカーに限りませんが、日本のメディアは政治や経済に対する中立性が低く、報道の自由度も世界的に低い事で知られています。
こういった現状の日本社会で、子供だけが変わるのは本当に難しい。
大人も社会も変わらなければサッカーは強くなるのは難しいのでは?と、僕は思います。

 

◆ 総論: 日本の少年少女サッカーの子供たち、そして親御さんに心がけてほしいこと

大事な要素が要所にあったわけですが、以下の3つをポイントとしてあげてみました。
1. まずは子供たちの手本となる我々大人が「成長」すべし
2. 子供たちが自ら考え、判断し、行動できるようになコミュニケーション、指導・教育をする (指示がないと動けないではなく)
3. 親はガンガン、監督・コーチにも子供たちとも意見を交わす (極力ポジティブなフィードバックで)

コラム編集部の感想として・・・
今回の座談会の話、サッカーがテーマであったが、
サッカーだけではなく、大半がビジネスの場でも言えることであると感じた。
特に指示待ちではなく、自分で考え判断する、そして行動する。
時には、必要ならばルールを変える。
型にはまった思考と行動でなんとなく無難で安全な思考・行動をしがちだが、本質は何か、ゴールは何か。

このクセが幼少期から身につけられれば、サッカーや他のスポーツ、そしてビジネスや、日々の生活など、あらゆる場面で武器になることだろう。
少年期からやり直したい・・・とはいかないので、せめて子供たちのより「良い成長」のために精進したいものです。

▼埜口 隆之さんおすすめ本
サッカーでゴールを量産するために「心」「技」「体」を整える方法 長谷川太郎
https://books.rakuten.co.jp/rb/15127417/?fbclid=IwAR0lMTorVF5p8HfTfIrjfqcQlADorYPKNLQpHW6esHpspLtdG-9G9rdVDOQ


▼ケイタ☆ブラジルさんおすすめ本
日本人が海外で成功する方法 (角川書店単行本)  松井 大輔 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07GQHVY39/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1&fbclid=IwAR1QC2Ce3bCsGtrfAAlfNy0z8-zI77AiOeWpHiYpKr4bSe00KA9_6yeipSg